僕はプログラマやシステムエンジニアとして約20年間、中小企業で働いています。
本記事では、そんな僕が感じる中小企業(僕が所属している会社)の課題について記事にしています。
筆者のプロフィール
- 40代、二児の父
- 大手企業3年、中小企業20年弱 在籍、現在は中小企業の部長
- 習得言語:Java, JavaScript, C#, HTML, CSS, PHP, Rubyなど
- 保有資格:ITパスポート, 応用情報技術者, LPICレベル1
- 趣味:サッカー, 漫画
目次
【IT業界】中小企業の課題
課題1:課長の役割が曖昧
大企業の場合は「課」が存在します。そのため、課長は「課」の予算管理、人員管理など管理職としての仕事をするのが一般的です。
しかし、中行企業の場合は、そもそも「課が存在しない」ことがあります。実際に僕が所属している会社には「課」は存在しません。なぜ「課」が存在しないかというと組織が小さいので「課」を作る必要がないからです。
そのため、課長という役職でありながら「課」を管理する必要がありません。なので僕の会社では「課長」という役職は「課の長」ではなく「課長」クラスの技術者というのが正確な役割です。
「課」が存在しないのに「課長」という名前の役職。僕の会社にはたくさんの課長がいます。
僕が主任という役職だった若手時代、役職者が集まる「部会」という会議がありました。その会議では主任や係長に比べ、そもそも会議に出席しない課長、出席してもほとんど発言しない課長が数名存在し
「なぜ、こんなにもやる気のない課長が多いのか?」
すごく疑問に感じていました。
時が流れ、僕は40歳付近で課長になりました。そして課長になったことで、なぜ課長の人達がやる気なかったのか、その理由がわかりました。
課長のモチベーションが低い理由
- 「課」が存在しないため、係長とやることはそこまで変わらない
- 係長は残業代をもらえるが、課長は年俸制なので残業代はもらえない
- 給料は、忙しい現場であれば係長時代の方が多い
- 忙しくない現場の場合は年俸制なので、定時であがっても安定した給料がもらえる
- 「課」が存在しないので、部長の仕事がイメージできない
- 部長の仕事がイメージできないので、部長への昇進意欲が湧いてこない
- 部長への昇進意欲が湧いてこないと、目標がなくなる
- 結果、忙しくない現場で仕事をしているのが"楽"で私生活も充実できる
僕が課長になって感じたことは上記のとおりです。
はじめは課長に昇進し、嬉しくやる気に満ちていましたが、給料が思ったより上がらず、モチベーション低下。
忙しい現場では係長時代の方が給料を多くもらえるため、忙しい現場で働く気にならずモチベーション低下。
主任や係長時代は課長を目指していたのに対し、部長への昇進意欲が湧いてこないので、目標を失いモチベーション低下。
忙しくない現場では、残業しなくても、そこそこの給料をもらえるので、忙しくない現場に居心地の良さを感じはじめます。忙しい現場と忙しくない現場、どちらで働いていても、もらえる給料は変わらないので、忙しくない現場が良いと感じるのは当たり前のことだと思います。
結果、今のままで良いと感じるようになり、昇進を目指す主任や係長に比べると「頑張ったって変わらない(居心地が良いので変わりたくない)、意欲を出すと忙しくなる、面倒な仕事を与えられる、明確な役割がないので何をすればよいのか分かりにくい」などを感じるようになり「課長のモチベーションが低い」理由が、僕自身が課長になり実感しました。
課長まで昇進した人達は優秀な人材です。その人材のモチベーションが低下する仕組みになっている中小企業の「課長」は大きな課題だと僕は感じています。
「課」がないなら課長なんて役職は作らず、部長から年俸制にした方がよいのでは?と思いますが、どうなんでしょう。難しい問題ですね。
課題2:研修が外部任せで役に立っていない
研修制度が充実している大手企業に比べると、中小企業は研修制度が充実していません。
なぜ充実していないかというと、研修に予算を確保できる大手とは違い、中小企業はそこまで多くの予算を研修に使うことができません。
その結果、外部の研修を利用している企業が多く、役に立っていないのが現実です。
外部の研修が悪い訳ではありません。外部の研修でも充実している研修はたくさんあります。
ただ、その人にマッチした研修ができていないのです。
外部に研修を任せているので、自社社員の得意分野、不得意分野、どんなことを学びたいと感じているかなどの情報が収集できません。その結果、その社員が望んでいる研修を実施できず、望んでいる研修ではないため、社員も仕方なく参加しているケースがほとんどです。
課題3:客先常駐の働き方が多く、帰属意識がもてない
IT業界では、中小企業の社員が大手企業に常駐して働く働き方が一般的です。このような働き方を客先常駐といいます。
IT業界はモノ作りの業界です。何か新しいシステムを作るとき、一時的に多くの技術者(エンジニア)が必要です。そのため、案件を受注した大手企業は、中小企業の技術者を一時的に雇います。
その結果、大手企業に派遣契約もしくは準委任契約で雇われた中小企業の社員は、大手企業のオフィスに出社して働く、この働き方が非常に多いです。
僕も約20年弱、中小企業で働いていますが、自社で作業していた期間は2年くらいで、それ以外の期間はすべて客先に常駐して働いていました。
客先では、客先の社員と一緒に仕事します。派遣契約であれば客先リーダーの指示に従い働き、準委任契約であれば客先から仕事をもらって働くといった形です。
客先に常駐して働いていると、自社に帰社することはほとんどありません。同じ現場以外にいる自社社員と一緒に仕事をすることもありません。
そのため「自社の忘年会に参加すると、知らない人ばかり」そんな不思議な現象が発生します。
客先常駐という働き方は、技術者が必要な大手企業と、技術者を提供すればお金がもらえる中小企業にとって「Win Win」の関係が成り立つ働き方です。
しかし働いている社員目線で考えると、自分がどの会社に所属しているのか、よくわからない働き方であり、帰属意識が無くなるのは当たり前の働き方です。
課題4:評価制度が曖昧な為、正しく評価されなかった優秀な人材がやめていく
IT業界の中小企業は客先に常駐する働き方をしている会社が非常に多いです。
その結果、評価制度が曖昧になり「正しく評価されなかった優秀な社員が辞めていく」そんなことが発生します。
客先常駐は客先に常駐して働く働き方です。客先に評価してくれる上司がいるのであれば良いですが、上司がいないこともよくあります。上司がいない現場でどうやって評価しているのでしょうか。
それは
お客様の評価です。
お客様の評価が高ければ、評価される。客先常駐で働いている社員にとってお客様の評価はかなり重要です。
ここで問題になってくるのが、お客様によって評価基準がバラバラという点です。
- 難易度の低い現場で評価を高め、お客様評価が高い
- 難易度の高い現場で苦戦し、お客様評価が低い
例えば、上記のような2つの現場があるとします。きっと①の現場で働いている社員の方が高く評価されるはずです。
ただ本当に①の現場で働いしている社員の方が優秀な社員なのでしょうか?もしかしたら②の現場で働いている社員の方が、技術力が高いかもしれません。
このように客先常駐をメインとして働いる会社では、お客様評価に左右されやすく、正しく評価されない社員がいる可能性があるのです。
その結果「正しく評価されなかった優秀な社員ほど、転職して会社を辞めていく」そんなことが発生します。正しく評価していれば会社を辞めなかったかもしれません。
課題5:自社製品がなく、請負案件も少ない
客先常駐をメインにしている中小企業は、自社製品がなく請負案件も少ない(自社が開発する案件)傾向にあります。
客先常駐は大手企業と中小企業お互い「Win Win」の関係が成り立つ働き方であり、良い働き方だと思っています。
ただ、客先常駐に頼っているだけでは、きっとその企業は「これ以上、飛躍することはない」と感じています。客先常駐は会社にとっても社員にとっても"楽"な働き方です。
会社は技術者を提供するだけでお金がもらえ、社員も会社を辞めずに違う現場に移動できます。
ただせっかく入社した会社です。その会社でほとんど働かないのは少し寂しいです。
自社製品や請負案件を増やし、自社で働ける社員を増やす、その活動はするべきであり、会社を飛躍させるには必要なことだと思っています。
今はテレワークが増えてきているので、準委任契約でも持ち帰らせてくれる企業も多いはずです。
- 自社の忘年会に参加すると、知らない人ばかり
- たまに帰社するとアウェー感を感じる
- 自分がどこの会社に所属しているのかわからなくなる
社員が誇れる会社にするためにも、客先常駐に頼る働き方を見直す必要があるのかもしれません。
終わりに
これまでに書いた内容から「結局、やっていることは人材派遣会社と変わらない」と思われないことが大切だと思っています。
実際、客先常駐は人材派遣会社とやっていることは変わりません。ただ人だけ派遣して終わり。そんな会社に魅力はありません。
僕の会社も客先常駐をメインとしている中小企業ですが、話を聞いてくれる上司が多く、居心地の良い会社です。
ただ課題は多くあり、改善点の多い会社であるとも感じています。
中小企業は大手企業に比べ、予算が少ないため、研修制度や福利厚生が充実していないのは仕方のないことです。
また、新入社員も大手企業を優先する人が多く、大手企業に比べると中小企業には優秀な人材が入社してくることが少ないのも現実です。
そんな中で、社員の退職率を下げ、会社の売上を上げるには、どうすればよいのか。中小企業にとって大きな課題です。